fragment no.6
思い出のかけらは、まるで生い茂る木々の葉から漏れ広がる太陽の光のように、眩しくて、温かくて、神々しいものだ。僕はいつでもその光を心の引き出しから出しては自身をリセットする。それら全ては僕の人生そのものであり、誰にも見せる事の出来ない宝物となった。急激な変容を繰り返すこの世界で自らの心までも変えられそうになる時、抵抗するかのようにそれらの光が体を覆い尽くす。人には忘れたくない過去もあれば、忘れ去りたい過去もあるだろう。それらはその人が歩んできた1本の道として繋がっている事実は変えられない。現在や未来を見据えても、今の自分を構築したものは全て過去に他ならないし、未来は今この瞬間が過去となり訪れる。幼少期というものは、その後の自身を構築する上で基礎となる大事な時期だ。これから歩む人生を左右するのは、幼少期に心がどう育つかに懸かっている。それは良くも悪くも、死ぬまで自分に影響を与え続ける強力な力となり続けるのだ。子供たちに、愛や希望に満ち溢れた過去を作ってあげたい。人や街、世界は刻々と変わる。まるで、変わらない事が罪であるかのように。どこまでも突き進み、僕らはそれに乗っかるしかない。混迷と焦燥に駆られる世界で僕は、心の引き出しからそっと光を出してみる。その光はとても穏やかで静かだ。